毛が抜けてしまうことに悩む人たちにとって、健康な毛髪を作る成分は貴重な存在です。こういった成分のほとんどは健康な毛髪を作るために開発されたものではありません。他の病気用に作られた薬剤などに、たまたま健康な毛髪を作る能力があるとわかったものが多いのです。女性の抜け毛にも対応できるというスピロノラクトンも、その一つです。

今回は、スピロノラクトンの健康な毛髪を作る能力に関してや、その反動について見ていきたいと思います。

スピロノラクトンって、どんな薬？

そもそもは、体内の余分な水分を排出する利尿剤

スピロノラクトンは、本来は利尿剤として使われる薬剤です。人体には成人で体重の約60％の水分、高齢者は約50％の水分があり、余分な水分は塩分とともに尿として体外に排出されます。しかしなんらかの理由で腎臓の機能がおとろえてくると、排出されない水分がたまって浮腫（むくみ）が起きます。

スピロノラクトンは水分の排出を促し、さらにほかの利尿剤と違って体内のカリウムの排出をおさえることができる薬剤です。

体内に余分な水分を作らせず、むくみを無くす

こうしたことから、スピロノラクトンは本来、腎性高血圧症や腎性浮腫（むくみ）、現発性アルドステロン症などの病気のメソッドに使われます。薬剤は、体内のアルドステロンをセーブすることがあり、余分な水分が排出されて、むくみや高血圧が元通りになります。

降圧剤はそれほど強いものではなく、おだやかに血圧を下げていきます。

男性だけでなく、女性の抜け毛対策にも

スピロノラクトンは健康な毛髪を作るために作られた薬剤ではありませんが、利尿剤として摂取するうちに「抜け毛の量が減ってきた」「細かった髪の毛がしっかりしてきた」いう患者さんが多かったために、その健康な毛髪を作る力に注目が集まりました。

さらに、スピロノラクトンは男性だけでなく女性の抜け毛にも対応できることが特徴です。ヘアケア用品は男性にフォーカスしたAGA対応のものが多いのですが、スピロノラクトンの仕組みは、女性の抜け毛にも実力を発揮しやすいことが近頃では分かってきています。抜け毛に悩める女性にとっては、うれしい薬剤ですね。

スピロノラクトンの実力

ジヒドロテストステロンを妨げ、抜け毛を防止

スピロノラクトンがなぜ抜け毛に対応できるかというと、毛が抜けてしまう原因のひとつである、ジヒドロテストステロンを妨げることができるからです。

ジヒドロテストステロン（DHT）は、テストステロンが体内で変化してできるものです。DHTがたくさん分泌されると、髪の毛を作り出す髪の毛の元が分裂しにくくなります。分裂しない髪の毛の元からは新しい髪の毛が生まれてこず、ヘアサイクルによって自然に毛が抜けた後は抜けっぱなしです。これでは健康な毛髪を作るようにうながすことはできません。

スピロノラクトンがDHTをおさえれば、それだけ髪の毛の元は活発に分裂を繰り返し、新しい髪が生えてきます。ちなみに、ジヒドロテストステロンは女性にも分泌されますから女性に対する能力もあります。

DHTの分泌量には影響なし

こんなふうに、DHTを抑えるなんて、体にとってはいいことなのか？という疑問もが出てくるでしょう。ヘアケア用品の成分にはDHTの分泌量をセーブするものがあるので、あまり大量に毎日使い続けないほうがいいという意見もあります。

しかしスピロノラクトンの場合は、DHTの分泌量に影響はありません。なぜなら分泌量を減らすのではなく、分泌されたDHTが髪の毛の元にくっつくのを阻害するのがスピロノラクトンだからです。

DHTの分泌量に変化がなくても、髪の毛の元は元気

少し詳しく言えば、体内で分泌されたDHTは髪の毛を作るもとになる髪の毛の元の「アンドロゲンレセプター」というものと結びついて、髪の毛の元の分裂を妨げます。

しかしスピロノラクトンを内服していると、アンドロゲンレセプターにはスピロノラクトンが結合してしまい、いくらDHTが分泌されてももうレセプターに結合することができません。

その結果、DHTは通常通り分泌されますが、髪の毛の元の分裂には影響が出ません。ヘアサイクルは順調におこなわれ、毛が抜けたあとには元気な髪の毛が生まれてきます。

気になる反動は？

発疹などの過剰反応

スピロノラクトンには、さまざまな反動が起きる可能性があります。というのも、もともとはメソッドに使われる薬剤ですから、薬としての成分が強いのです。

よく見られるのがかぶれや発疹、皮膚炎などの過敏症状です。過剰反応の一種と考えられ、日光過敏症（日光に当たった部分が赤くなり、かゆみもある）などが起きる可能性があります。

内服で長期間のみつづけた場合、リスクが考えられる

スピロノラクトンを長期にわたって使用し続けていると、体調不良が起きるリスクが高まります。低ナトリウム血症、高カリウム血症、アシドーシスなどの電解質異常などのことです。また、それほど頻度は高くありませんが、まれに好酸球の増加がおきることがあります。

こういった反動の出現は、どんな薬剤でも起きうることです。スピロノラクトンを内服する場合は定期的に医師の診察を受け、指示された検査は必ず受けましょう。

内服すると女性ぽさが増すような反動

スピロノラクトンの反動には、「女性ぽくなる」というものがあります。摂取すると体内で女性ぽさが増すという意味で、女性の場合は体内の環境がよくなってニキビが少なくなるなどのメリットがありますが、男性の場合は女性化が問題になります。

性欲減退や食欲不振、だるさ、立ちくらみなどを感じる人もいます。なお、外用薬に含まれるスピノラクトンは量が少ないため、大きな問題はありません。

おわりに

これまでのヘアケア用品のメインターゲットは主に男性でした。しかし抜け毛に悩む女性も少なくありません。スピロノラクトンを使ったヘアケア用品は、男性にも女性にも等しく期待できますね。

また、スピロノラクトンは医薬品なので高い実績が見込める分、反動が起こることもまれにあります。ヘアケア用品に含まれる含有量であれば、ほとんど心配はいりませんが、不安な方は念のためお医者さまに相談してみてください。